大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)97号・昭37年(行ナ)98号 判決

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、前掲請求の原因記載のように、本件各審決は、次の二点において、判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである旨主張する。よつて、これらの点に関する当裁判所の判断を説示する。

(一) 利害関係の有無について。

被告らがいずれも各種カメラの製造販売を業とするものであることは、原告のみずから認めて争わないところであり、被告らが一眼レフレツクスカメラを製造していることは、成立に争いのない乙第二号証の一、二、同第三号証、同第四号証の一、二及び丙第二号証の一から三、同第四号証の一、二により、それぞれこれを認めることができるから、被告らは、本件特許を無効とする審判を請求するにつき利害関係を有していたものということができ、この点に関する本件審決の認定に誤りがあるものということはできない。

(二) 本件特許発明と引用例のものとが同一発明といえるかどうかについて。

本件特許発明と引用例記載の一眼レフレツクスカメラとを対比するに、反射鏡の下方への案内軌条溝の構成が、引用例のものにおいては「く」の字状の直線的構成であるに対し、本件特許発明においては、それが弧状であることが相違するにすぎないことは、原告の自認するところである(原告は、両者の構成上の顕著な相違点として右の点を挙げるほか、他に構成につき相違点のあることを何ら主張しない。)。

よつて、この相違点について審究するに、成立に争いのない甲第一号証(本件特許公報)によれば、本件特許発明においては、反射鏡の下方への案内軌条溝の下端が弧状をなしており、支持枠の下部遊嵌杆がその弧状面を通過する構成であるため、下降に際し、反射鏡の下端は、弧面をえがいて下降するので、反射鏡の下降によるカメラ振れを緩衝的に防止しうべく、これにより、他の機構と相まち、反射鏡の下降上昇が迅速かつ適確に行われる効果が期待されるものであることが認められるところ、成立に争いのない乙第一号証(引用例)によれば、引用例においては、この案内軌条溝(誘導路・Guide ways)の水平部は直線をもつて構成されているが、該部分は傾斜直線部と、百三十五度前後の鈍角をもつて交わつているのであるから、この部分を通過し案内軌条溝を下降する反射鏡下端の運動は、弧面をえがいて下降する場合のそれと大差なく、また、右水平部分も、前掲甲第一号証により認めうべき本件特許発明において案内軌条溝下部の形成する円弧は、きわめて緩やかなものであり、しかも、その長さも、さまで長くないものであること(この種カメラの機構上当然のことである)を考え合せれば、その作用効果において、弧状に形成されたものと、いうに足りるほどの大きい差異があるものとは認められない。すなわち、言葉をかえていえば、本件特許発明における案内軌条溝がその下部の構成により、反射鏡の下降運動によるカメラ振れを緩衝的に防止しうるとすれば、引用例の誘導路もまた、多少の程度の差はあるにしても、これと同様の効果を挙げうるものと認めるを相当とし、原告のいうところの「顕著な相違」も、帰するところ、いわゆる設計上の微差にすぎないといわざるをえない(もつとも、本件審決が、この点に関し、「その円弧がきわめて大きいときは、ほぼ直線ともなり、したがつて、機能的にその相違があるものとは認められない」と説明したことは、被告キヤノンカメラ株式会社訴訟代理人も指摘するように、技術的認定の理由としては、きわめて不たしかな立言といわざるをえないが、認定そのものに誤りがあるとすることはできないこと、当裁判所の前掲説示に徴し明らかであろう)。

なお、原告は、本件特許発明においては、反射鏡は、原告主張の前掲(ロ)の運動のみを行うことを要旨とし、これにより、超広角、大口径レンズの使用を可能にし、レンズを鏡面に可及的に近接させることができ、かつ、カメラ振れの緩衝及びレンズの選択による近接撮影の可能化という技術的効果が得られるものである旨主張するが、本件特許発明において、反射鏡が原告主張の(ロ)の運動のみをし、(イ)の運動はしないものと認めるべき理由は見当らないばかりでなく、原告主張の技術的効果のうち、レンズを鏡面に、可及的近接させることができることとした点及び超広角又は大口径レンズの使用を可能にした点は、「反射鏡が光軸に対して四十五度の位置から、その傾斜角度を漸次減少しつつ暗箱の下面に、ほとんど平行となるように下降する」機構をとつたため、「レンズの後部が反射鏡によつて反射される有効光線の進路を妨げない程度に、そのレンズを反射鏡の鏡面に可及的近接をさせることができ」、したがつて、「超広角又は大口径レンズをも自由に使用できる」に至つたものであることは、前掲甲第一号証の右と同趣旨の記載に徴し明らかであり、カメラ振れの緩衝的防止の点については前記のとおり認定することができるのであるから、原告の前示主張は理由がないものといわざるをえない。

(むすび)

三 しかして、前記引用例、すなわち英国特許第五、四一一号明細書(乙第一号証)が本件特許出願前国内に頒布されたものであることは、当事者間に争いのないところであるから、本件特許発明をもつて、旧特許法第四条第二号に該当するとした本件各審決のこの点に関する判断は正当であり、これを誤りであるとして、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。

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